成安造形大学
2018年、春 情報デザイン領域始まる。
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情報デザイン領域

UIデザイナー 御守なつの

  1. SCENE 1
  2. SCENE 2
  3. SCENE 3
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SCENE 1

ひとつの製品の開発に数年かかることも。ユーザビリティをじっくり調査。

私は計測機器や医用機器、航空機器、産業機器などの製造を行う島津製作所に勤務し、総合デザインセンター(機械の設計やソフトウェアなどコアな技術を研究している施設)の中にあるデザインユニットにてUI(ユーザー・インターフェース)デザイナーとして働いています。デザインユニットには、プロダクトデザイナーやUIのデザイナー、またユーザビリティの評価をするメンバーと、デザインの実現方法を検討するソフトウェア担当のメンバーで構成されています。

今年で入社4年目ですが、これまで、医用機器や計測機器に関するUIデザインの仕事を担当しました。具体的には、レントゲンを撮る装置や二酸化炭素などのガス濃度検査や測定を行う装置などの、操作画面やボタンのデザインをしています。現行品のリニューアルということが多いので、すでにあるものをよりよくすることが大事です。

医用機器の主なユーザーは、放射線技師の方やお医者さん。ヒアリングといってユーザー調査を行うのですが、病院などで一日中その製品が必要な場面の診療を見たりしてます。そのなかで使いにくそうにしているボタンの配置や無駄な動作を発見したり、より作業がはかどるための機能などを想像したりしながら、改良のためのリサーチを行います。自分で調査に参加できること、また、本質的な問題を見つけ、それをデザインに反映できるということはとても楽しく、まだ若手なのですが、調査の現場に行かせてもらえるのは、とても新鮮で嬉しいですね。

大幅な改良がある製品開発の場合、開発期間が長く、要素開発から製品完成まで数年かかることがあります。今作業をしているX線撮影装置も、私が関わり始めたのは去年で、完成はまだ先です。この仕事をしていて、完成して、実際に稼働している場面をみたことはまだありませんが、長い時間をかけた分、感動は大きいと思うので、気長に取り組んでいきたいと思います。

また、今はプロジェクトの途中から参加することの方が多いのですが、その製品の一番最初、「そもそもどういうものをつくるべきか」という部分から関わることができたら、もっと面白いだろうなと思っています。

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イラスト
SCENE 2

アイコンひとつとっても、どんな形なら伝わるのか、苦戦しています。

装置のUIデザインにおいて、例えば画面の種類が10パターン以上あるものもあって、文字の大きさ、色合いなどを検証しながら、どの情報を一番目立たせるか、そもそも一番小さな文字情報がこの文字で読めるのかなど、使いやすさを高めていく作業を日々行っています。

アイコンひとつとっても、何をシンボル化して、どんな形に落とし込むのか、答えを見つけるのにとても苦労する部分です。一日中アイコンづくりと格闘する日もあります。例えば、X線装置で血管って映らないんですが、造影剤という薬剤を血管に通すと、血管が撮影できるようになるんです。骨だけの写真と、血管と骨を写した写真の情報を使って、血管だけを表示したり、新しく撮影するときに以前撮った血管を重ねて表示を切り替えたりする機能があるんですが、その機能を示すアイコンをつくってほしい、という依頼があります。これといったモチーフがない上に、似たような機能を複数つくり分けないといけないとなると、制作は難航します。1個の装置に対して200個ぐらいアイコン作成の依頼がくることもあるので、細かい作業が続くこともしばしばあります。

弊社の医用機器は複数の国で使用されることを想定しているので、アイコンやボタンは、言語を超えて理解できるようにすることが理想です。国や文化による違いで言うと、黄色を未熟なイメージととって好まれない国があったり、目の色素の薄い濃いで画面がまぶしく見えたり、ボタンの適正なサイズも体格によって大小異なったりということもあるんです。世界の誰でもわかるデザイン、というと際限がないですが、大変な分、モチベーションが上がる仕事でもあります。

主なユーザーは医療関係の人ですが、その先には必ず患者さんがいることも忘れてはいけないことです。「この画面は患者さんに見える可能性が高いので、目隠しできる機能がほしい」といったことも、病院でヒアリングを行ったときにわかることですね。

ユーザー調査をする際は、手術室や検査室など、緊張する場面が多いですが、現場を見に行くことで、たくさんの意見や裏付けを取ることができます。表面上のデザインではなく、根本的な使いやすさ、必要性、エラーを無くすようなデザインというものを、実際に自分の目で見て調査結果を反映させることができる、その部分が面白いですね。「使いにくい」「なぜ?」の理由を客観的に掘り下げられる。細かい部分までUIデザインを突き詰めていく楽しみがあります。

SCENE3を読む
イラスト
SCENE 3

大学時代に出会った、UIデザインの楽しみ。

昔からそうなんですが、デジタル家電やパソコン、端末などの新商品が出ると、とりあえず触ってみたいと思ったり、ソフトウェアでもボタンのディテールとか気になったりして見ちゃいますね。OSもバージョンアップされたら、すぐにダウンロードして、ひと通りさわってみたくなります。

UIデザインに出会ったのは大学の時でした。グラフィックデザインコースで学んでいた私は、UIデザインなんて全く知らなかったんですが、3年生の時にiPhoneのアプリを制作する授業で経験したことがUIデザインを知るきっかけとなりました。ガジェット好きの私にとっては、とても魅力的な分野に思えたのを覚えています。

授業では、アプリを考える上で、ペルソナというユーザー像をつくって、その人がどう使うのかシナリオを考えて、いかにニーズに落とし込んでいくかを考えます。落とし込むためにどういう手法を使って考えていくべきか、実際にプロトタイプをつくって、他の人に触ってもらいながら検証します。わかりにくい部分を修正していき、最終的に見た目まできれいにデザインを調整しました。そんなUIデザインの流れをひと通り知った時に、自分がそれまで考えていたような、ターゲットを決めてコンセプトを固めてつくっていく、理由と効果のはっきりした堅実なデザインのあり方が一番発揮される場面のように思えて、とてもしっくりきたのを覚えています。その時の先生に、今の会社への就職のチャンスも教えていただいて、UIデザイナーの道を示していただきました。

UIのデザインは、ポスターのように見てもらったり、情報を伝えて行動を起こしてもらったりすることがゴールのグラフィックデザインとはまた違って、使われた時の体験もゴールに含まれているのが素敵だな、と思ったんです。ユーザーのニーズが根本にあるので、つくったものが人の生活の近くにあるというのも仕事の満足感につながっている気がします。

学生時代に初めてアプリをつくった時の楽しかった体験が残っているのかもしれませんが、将来的には、デザイナーとして、調査から問題抽出するところに始まって、デザインへの落とし込み、リサーチからデザインの評価を経て完成に至るまでの、製品の制作におけるUIデザインについてを最初から最後まで関わってみたいですね。そもそも、「どういうものをつくるべきか」という段階から根本的なユーザーのニーズを抽出して、製品の仕様に落とし込む、そこからもデザイナーが関わっていけるようになることが理想でもあります。それに、今は「BtoB(企業・法人向け)」の仕事がメインですが、いつかは「BtoC(一般消費者向け)」の製品の開発もやってみたいですし、幅広い範囲でUIデザインというものを経験してみたいと思っています。

             

(インタビューは2017年5月に行われたものです)

WORKS

ポータブルガス濃度測定装置「CGT−7100」(島津製作所)操作画面デザイン
ポータブルガス濃度測定装置「CGT−7100」(島津製作所)操作画面デザイン
ポータブルガス濃度測定装置「CGT−7100」(島津製作所)操作画面デザイン

PROFILE

プロフィール画像
UIデザイナー
御守なつの

1991年、京都生まれ。2014年、成安造形大学グラフィックデザインコース卒業。大学の授業でUIデザインやHCD(人間中心設計)の考え方を学び、UIデザイナーの仕事を志す。2014年に株式会社島津製作所に就職し、自社製品のUIデザインを担当。現在は主に医用製品を担当しており、医師や放射線技師などプロ向けのデザインを研究している。

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